『紫式部集』論ほぼ出来あがり

<『紫式部集』のチカラ相撲――メイキング・オブ・『源氏物語』> (2016/10刊)

版下がほぼ出来あがった。200ページのフランス綴じに挑戦、態態(ワザワザ=「こゝろ」をもった「熊」! 単なるオジイサンギャグ)読者にページを切って読んでもらおうという、この忙しい世の中で、ゆっくり読んでもらうための、ぼくの貧しい仕掛けではあります。

 

ネットで調べたところ、ツーリストクラスの機内食についてくる、あのプラスチックのナイフが一本2円ほどなので、これをつけて売ったら、少しは美味しく読んで貰えるのでは?

8ページずつが一丁となるように印刷すると、8ページごとに見開きのページができる勘定。つまり、8-9、16-17、24-25のようなページは、切らずに読めることになる。

 

そこで、たとえば8ページ目に本文とは関係のない「囲み記事」を、挿入しておけば、読者はページを切る前に、その記事を先に読んで面白そうでなければ、買わないという選択肢もありうる。もっとも、今回は自社制作のネット販売だから、注文がなければ売らないということなので、返本は困る。とにかく、なるべく面白いトピックで短文をつくり、ページを切る愉しみを味わってもらえれば、と思う。

 

9月10日までアメリカだが、渡米前東京の丸善に、近頃のフランスの本はどんな表情をしているのだろうと、見にでかけた。驚いたことに、フランス書の棚には、フランス装幀の本が一冊もなかった! 昔、ガリマールから出ていたカミュのL'Etrangerをページを切りながら読んで、途中で挫折した苦い思い出があるのです。結局原文で通読できたのは、アメリカの大学で中級フランス語が必修の課程をどうしても通過しなければならなかったとき。

 

そんなわけで、今度のぼくの本は、結構難解です。だれがこんな本とつきあってくれるかと思うほど、中身は一読して判るものではないかもしれない。でも、ぼくもそれなりに、この「大発見」の過程は一筋縄ではいかなかったのだから、多少の苦労は読者にもしてほしいと思うのです。しかし、読者のみなさんにも『紫式部集』の全貌が明らかになったときは、改めて作者の芸術のすごさに感嘆しないわけにはいかなくなること、請け合いです。